日 時 :2024年1月15日(月)15:00-18:00
場 所 :東京藝術大学上野キャンパス・国際交流棟3Fコミュニティサロン
主 催 :東京藝術大学未来創造継承センター
メンバー:服部浩之(キュレーター/大学院映像研究科メディア映像専攻)
西尾美也(美術家・ファッションデザイナー/美術学部先端芸術表現科) ※話題提供者
畑まりあ(アートマネジャー/共創拠点推進機構)
幅谷和眞(リサーチャー/未来創造継承センター)
阿部航太(デザイナー/文化人類学専攻)
平諭一郎(研究者/未来創造継承センター)
参加自由・事前登録不要・途中入退出自由
アートとプロジェクトの記録と記憶を語ることを目的としているとはいえ、およそ学術や教育とは縁遠い「茶話会」とその名がついた催しは、誰もが気軽に参加できるお祭りのようであり、それ自体がアートプロジェクトのようであった。セミナーの講師と観客のような、ワークショップの主催者と参加者のような分け隔てをできる限りなくそうとする試みは、誰かが話している途中であっても質問したり、休憩したり、会場への出入りも自由にしている。
はじめに、会の発起人となるメンバーから、それぞれが活動を行うなかで生成される写真や映像、論考や批評による記録だけではなく、人々が交流するプロセスを共有していくことの重要さと困難さが語られた。また、当事者や同時代の人々以外にも、まだ見ぬ未来へと活動をどのように伝えていくか、時間を超えた記録や記憶のあり方も考察していくようだ。そして、美術家・ファッションデザイナーという立場で活動している西尾が話題提供者となり、自身のプロジェクトを紹介しながら、集った人々が思い思いに質問や感想を重ねていく。地域の市民から集めた4000着の服を解体し、それらを記述し、着用し、撮影しアーカイヴしていった《1000 Coordinates》や、他者と着ている服を交換する《Self-Select》、大阪市西成区の「おばちゃん」とともに立ち上げたファッションブランド《NISHINARI YOSHIO》。何れも装いの行為とコミュニケーションを主題としたプロジェクトである。それらの記録として批評家やキュレーターが捉えきれない活動の痕跡を民族誌的に記述し、また表現として写真や映像、文章を創造していく可能性を述べた。西尾の「表現を着替える」という語から、アーカイヴしていく人や表現、また伝える対象の身体的多様性について議論が展開し、プロジェクトの記録と記憶は、ただひとつの解を目指すものではないことを緩やかに同意しながら、次回の茶話会へと話を持ち越した。(報告:平)